ほのぼの甘/マイペース夢主




明け方。まだ薄暗い寝間の中、目が覚めた。何故だか、酷く窮屈だ。寝返りすらうてぬ状況に違和感を感じ、隣を見やる。


「…………!?」

至近距離に、椿の寝顔。
なっなんだこれは、どういうことだ!? 何故こいつが俺の布団にいる! 昨晩の記憶は鮮明に残っているが、椿を部屋に招き入れてはいない。いや、俺がそのようなことするはずもない。
これは夢なのではないだろうかと錯覚するが、首にかかる規則正しい寝息と密着した部位の温もりは確かに感じる。

固まったまま思考を巡らせていると、椿の眉がぴくりと動いた。
むにゃむにゃと口を動かしながら、あろうことか俺の腰に腕を絡めてくる。

「馬鹿っ、離せ……!」

腕を押しのけようと引っ張るが、さらに強く抱きしめられてしまう。その状況に耐えきれず、俺は無理やり立ち上がった。

バタン、と音を立てて椿の腕が床に落ちる。

「ん……?」


もぞもぞと身じろぎ、目をこする椿。やがて、ゆっくりと瞼を開いた。見下ろす俺の姿を確認して、へらりと笑う。

「あ、おはよー三成」

「何をのん気な……」

起き上がり、眠そうに欠伸をする椿に、思わず気が抜ける。こいつは今の状況をわかっているのだろうか……。そんな俺の気を知ってか知らずか、椿はさも不思議そうに首を傾げた。

「なんで三成がいるの?」

「っそれは俺の台詞だ。何故貴様が俺の部屋で寝ている」

そう言うと、椿はしばし考え込み、あ、と声を漏らした。

「もしかしたら、夜中厠に行った後寝ぼけて……?」

「寝ぼけて、だと?」

「うん、多分自分の部屋と間違えたんじゃない?」

まるで他人ごとのように笑い、どうりで暖かかったわけだ、と呟く。……こいつは何故こうも無頓着なのだ。これが俺の部屋でなければどうするつもりだったのだろう。そう考えて、腹が立った。
椿はそんな俺など気にもしていない様子で、欠伸を数度繰り返す。


「……まだ眠いなー……起きる時間にも早いし……」

布団を手繰り寄せ、俺に微笑みかける椿。

「三成、もう一回寝ようか」


その瞬間、己の頭にかっと血が上るのがわかった。

「馬鹿が……! 早く出ていけ!」

言いながら、動かぬ椿を強引にひっつかみ、廊下へつまみ出した。尻餅をついたらしく「痛っ」だのなんだのと言っているが、俺の知ったことではない。

「いいか、二度と俺の寝間に入るな」

「ちょっと三成、廊下寒……」

「知るか!」

椿の言葉を遮り、乱暴に扉を閉めた。

本当に、あいつは……! いつまでも収まらぬ火照りは、きっとあいつに対する怒りからなのだろう。――断じて、そうに決まっている。



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