ほのぼの〜甘/部下




「う、わあ……すごい」

半兵衛に連れられて城の屋根上に出ると、暖かな風が頬を撫でた。
満開の桜の木々が、城下の景色を鮮やかに彩る。
その見事な景色に、椿は感嘆の声を漏らした。


「もうすっかり満開だね〜。……どう、椿? 俺の言った通り、ここからの眺め最高でしょ?」

「はい、とっても綺麗です!」

満面の笑みではしゃぐ椿に、半兵衛は満足そうに微笑む。

「お気に入りなんだ、ここ。暖かいし、風も気持ちいいし、昼寝にも最適」

にっと悪戯っぽい笑みを浮かべる半兵衛。椿は素直に頷いた。

「そうですね、ここならのんびり寛げそうです」


にこにこと桜を眺める椿を見て、半兵衛は嬉しそうに目を細める。

「桜が散る前に、椿に見せたかったんだよね。この景色」

「そうなんですか?」

「うん。だから喜んでくれて良かった」

「ありがとうございます、誘ってくださって」

改めて頭を下げる椿に、半兵衛は慌てて顔の前で手を振った。

「いいのいいの、俺が椿と桜見たかっただけだから」

「いえ、半兵衛様とこうしてゆっくりお花見できるなんて……。嬉しいです」

「俺も嬉しいよ。……なーんか照れちゃうなぁ、面と向かって言うと」

「ふふ、そうですね」

顔を見合わせて笑い合う二人を、柔らかな風が包む。


「……あ、椿。髪に花びら」

「えっ? どこですか?」

「違う違う、こっち」

見当違いの場所に手をやる椿を見かねて、半兵衛がゆっくりと手を伸ばす。
髪に触れた瞬間、椿の肩がピクリと揺れた。

「取れたよ」

「あ、ありがとうございます……」

気恥ずかしさに頬を赤らめながらはにかむ椿の姿を、半兵衛がじっと見つめる。


「椿……そういう顔、俺以外に見せないでね」

「えっ、どうしてですか?」

そんなに変な顔をしていただろうか、と両頬を手で覆う椿。
半兵衛は何も答えずに、ただにこやかに笑んだ。


2012/05/02




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