「あら、子猫ね」 曲がり角で、ご機嫌で城内を歩いていた猫と出くわす。 猫は濃姫を見て、にゃー、と可愛らしく鳴いた。 「お散歩中かしら?」 嬉しそうに尻尾を揺らし、濃姫の足元をうろつく猫。 「可愛いわね。…………思わず、食べてしまいたくなるくらいに」 うふふ、と扇情的な笑みを刻む濃姫に、猫の白い毛が逆立った。 「冗談よ」 逃げ腰で一歩後ずさる猫。 「あら、怖がることなんてないのよ?」 濃姫は怯える猫を見て、着物の袖を口元にあて可笑しそうに笑う。 「でも、早く逃げた方がいいわ。ここは危険よ」 濃姫はそっと、己の唇に指を這わす。 「あの人に見つかれば……本当に食べられてしまうかも」 妖艶に笑う濃姫に、猫は一目散に逃げていった。 「……ふふ、本気にしたのかしら。可愛いのね」 ← |