何かの影が、ガサガサと庭先の木の葉を揺らした。

「曲者っ! ……なんじゃ、猫か」


木の枝にちょこんと座る猫を見て、政宗は構えた銃をしまう。

「驚かせおって……」


そのまま立ち去ろうとした政宗に助けを求めるように、猫はか細い鳴き声をあげた。

片足だけ枝から出してみては引っ込める。それを繰り返している猫の体は、よく見ると小刻みに震えている。

それを見た政宗は、目を丸くした。

「貴様、降りられぬのか」

にゃー

「馬鹿め、かような高い所に登るからじゃ」


政宗は呆れたように肩をすくめ、木に登り始めた。
あっという間に問題の枝にたどり着くと、猫に手を伸ばす。

「来い」

猫はふるふると震えるだけで、政宗に近づこうとはしない。

「案ずるな。わしが助けてやる」

ゆっくりと幹に向かって歩を進める猫。政宗がその小さな体をしっかりと掴み、するすると降りていった。


地面に戻った瞬間、猫は政宗の腕からするりと抜け、駆け出す。

「ふん……礼も無しか」

あっという間に見えなくなった猫の姿に、政宗は腰に手を当てて笑った。





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