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さて、陽もだいぶ傾いてきた。そろそろ帰るか。

俺は立ち上がって、ナマエも立ち上がるのを確認する。そしてナマエの隣りを歩くと、行きとは違う道を進み始めた。おい、どこに行く気だよ。自ら迷子になる気か。
俺はナマエの服の端を少し噛んで、ぐいと引っ張る。
それに気付いたナマエは、笑いながら俺の頭をポンポンと叩いた。


「道が違うって?こっちで良いの。グラエナ、お散歩して帰りたいんでしょ?それならこっちの道の方がいいし」

俺は思わずぽかんと口を開けてしまった。
何で俺がさっき思ってた事を知ってるんだ。だって、そんな素振りなんて全く見せていなかったのに。

「あはは、びっくりした顔してる。私にはグラエナの事なんてなんでも分かっちゃうんだから!」

してやったりな顔をするこいつには、やっぱり敵わないのかもしれない。いつだって俺の事を考えてる気がする。ほとんどは読みを外すけど。


俺はそのまま歩くナマエの後を付いていく。着いた先は一面に広がる草原だった。

「ほら、自由に遊んでおいで!」

広い場所で走り回るのは久々で、俺は柄にもなくテンション高く走り回った。進化した事で前より速く走れてる。一歩一歩が大きくて、ぐんぐんと先に進む。それがとても楽しかった。あっという間に、最初にいた場所よりも離れてしまった。

ふと、ナマエが気になって様子を見てみる。何やら花を摘んでいるらしい。つまらなくないのか、と思ったが本人が楽しそうなので口は挟まなかった。

しばらく走り回っていると、ナマエに呼ばれた。どんなに遠い距離だって、ナマエの声は俺の耳に届く。


「グラエナ!戻ってきて!」


俺はおとなしくナマエの元へ走って戻った。もう帰るのか、まあ俺は満足したから別にいいけど。
俺はナマエの隣りに立つ。するとこいつは、手に持っていた花の輪っかを俺の頭に乗せてきた。なんだこれ?


「花かんむり作ったんだ。今日は進化した記念だからね。似合ってるよ!」


そう言ってナマエは満足気に笑った。こんな花なんてムズムズするし、俺なんかよりナマエの方がよっぽど似合うに決まってる。

俺は下に生えていた1輪のピンク色の花の茎を、噛みちぎって口に咥える。そしてナマエの正面に立ち、前脚を浮かせて後脚だけで立ち上がる。前脚はナマエの身体へ寄りかかって、体重をナマエに預けた。顔がいっそう近くなって、まるで人間同士が抱き合うような体制だ。きっとポチエナのままだったら届かなかっただろうな。

そのまま花を、ナマエの耳の上辺りの髪にスッと刺した。目的を達成した俺は前脚を地面に着く。

ほら、やっぱりこいつの方が似合ってる。

ナマエは一瞬きょとんとした後に照れくさそうに顔を緩めた。


「グラエナから初めてのプレゼントだ。お揃いだね、嬉しいよ。ありがとう」


そうやって笑うナマエを見て、ナマエと一緒にいるのは悪くないなと感じた。俺もナマエと同じように笑った。








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