heart attack



あれからずっとニューラは私に着いてきた。歩き疲れて木陰で身体を休めていると、ニューラも合わせて休む。

「今日はもう休むのか?」
「…ちょっと休憩してるだけ」
「そっか。じゃあちょっと待ってろ」

ニューラはそう言うと、木から木へ軽々と飛びながらどこかへ行った。相変わらずニューラの考えている事は分からない。
そして私は未だに食料を見つけられていない。その為に歩き回っている。探し出すまで今日は寝られないな。方向が間違ってるのかな。気が滅入りながら、これからの進む道を考える。
しばらくその場で悩みながらじっとしていると、ニューラが戻ってきた。その手には見覚えのある青色の木の実。

「ニューラ、それ…」
「疲れただろ?体力回復にはやっぱオレンだよな」

はい、とその木の実を渡してくるニューラに驚いて固まる。どうしてそれを。

「…私、木の実を探してたの。生きるために食料確保しようと思って。でも全然見つからないから、こうやって探して歩き回ってたのに」
「あ、そうだったのか?」

ニューラは気に留める様子もなく、シャクシャクと木の実をかじる。私は戸惑いながらも、ニューラがくれた木の実をゆっくり口にする。もしかして、前の木の実も彼がくれたのだろうか。私はニューラを窺いながら疑問をぶつけた。

「…もしかして、前にも私にオレンの実をくれたのってニューラ?」
「まぁな。ちゃんと食ってくれたんだな、良かった」

そう言うニューラはどこか安心したように微笑んだ。あの時は最初にニューラに会ったばかりで、もう二度と会わないものだとばかり思っていたのに。その頃から私を気にかけてくれていたのか。なんでこんなにも優しくしてくれるんだろう。

「ねぇ、木の実のある場所教えてほしいんだけど」
「えー。俺だけが知ってる場所なんだけどなー。まぁ、一人じゃ何も出来ないグレイシアちゃんに特別に教えちゃおうかな」

ニューラに見下されてるような気がして不快になる。親切じゃなくて馬鹿にしているだけだったのか。少しでも信用しかけた私が情けなくなった。

「…やっぱりいい」
「何拗ねてんの、冗談だって!ほら、こっち」

ケタケタ笑うニューラに少しムッとする。そんなニューラは私を気にする事もなく、残りのオボンの実を一口で食べ終えて私の前へ少し進む。木の実のある所へ案内してくれるんだろう。私はまだオボンの実を食べ終えてなく、座ったまま食べ続ける。

「馬鹿にしないでよね」
「馬鹿に?してねーよ、そんなこと」

ニューラは振り返って、私に目を遣って立ち止まる。私がついて来てない事を分かってて前に進んだようだった。そして今は私を待ってくれている。

「ただ、グレイシアが心配なだけ」
「…なんで、こんな私なんか」
「んー、なんでだろうな」

ニッと笑いかけるニューラに思わず目が丸くなった。きっと彼は素直なんだろう。自分が思った事をそのまま口にするし行動もする。恐らく自覚はないみたいだけど。こんな彼なのだから余計に考える事はもうやめよう。私はもぐもぐと早く口を動かして、オレンの実を食べ終えた。
そして立ち上がり、ニューラに着いて行こうとした瞬間に、背後から突然の衝撃をくらった。何が起きたか状況が分からずに、ダメージを受けつつ地面へと倒れ込む。

「いえーい、だましうち成功!」

前に進んでいたニューラが真剣な表情になり、すぐに私の近くへと戻ってきた。そして、私の背後をじっと睨み付けている。私も体勢を整えて後ろを向くと、思わず黒い姿に驚いて隣りと見比べてしまった。

私に攻撃を仕掛けて来たのは野生のニューラだった。しかも4匹もいる。そのニューラ達は、私と一緒にいるニューラを見てニヤニヤと笑う。一見すると仲間にも見えそうなのに、どうやら違うらしい。

「お前珍しい奴連れてんなぁ」
「変わり者のお前が変な奴連れてるとか。なに、仲間でも見付けた気になった?」
「気持ち悪いお前なんかに仲間が出来るわけないだろ」

次々と罵倒を浴びせる集団のニューラ達は変わらず嫌な笑い声をあげる。隣りにいるニューラを見上げてみる。相手から睨みを外さないままだ。

「…ねぇ、あのニューラ達と仲間じゃないの?」
「前に少し一緒に行動してただけ。あんな戦闘狂集団、仲間なんかじゃない」

その言葉が相手に聞こえてのか、酷い事言うねぇと言うと同時に集団のニューラ達が襲いかかってきた。
ニューラが必死に戦っている中、私はどうしたらいいのか分からずに体毛を硬く尖らせて防御する他ない。

「おい、グレイシア!お前も戦えよ!」

集団のニューラ相手に、彼は慣れているような素振りで攻撃を繰り出す。そして私にも集団のニューラのうちの2匹がやってくる。攻撃されそうになった瞬間に、彼が素早く私の前に現れて攻撃を防いでくれた。

「…攻撃、出来ない」
「は!?」

ニューラが驚きながら私へと振り返る。今まで私は技を出した事がないし、攻撃だってバトルだってした事がない。加えてこの不利な状況で、どういう風にしたらいいのか、全く分からないのだ。

「人間に飼われてた奴ってのは、ご主人様の命令がなきゃ攻撃も出来ないのかよ!」

もういい、と舌打ちと共に彼は集団のニューラへと突っ込んでいく。違う、と叫びたかったけれど口がカラカラとしていて言葉を発する事が出来なかった。戦ってダメージを蓄積していく彼を見る事しか出来ない。それがなんとも悔しかった。

違う、私だってやる時はやる!私は敵のニューラをキッと睨みつけ一匹のニューラへとでんこうせっかを当てる。それは見事に命中したが、返り討ちにひっかく攻撃をされてしまった。私は立ち上がり、わふ、と眠気を相手にぶつける。そうして一匹を眠りの淵へと落とす事に成功した。
その事に自信をつけていると、他のニューラがまた私へと向かって来るのが見えた。私はそのニューラの攻撃をひたすらこらえる。そうして隙が見えた瞬間に、私はじたばたと暴れた。その威力は思っていた以上に強かったみたいで、一気に相手のニューラは倒れ込んだ。他のニューラ達はどうなってるのかと辺りを見回すと、彼にやられたらしく気絶していた。

「グレイシア、大丈夫か」
「うん、なんとか…」

私は歩けるくらいには体力が残っている。このまま続けてバトルは流石に難しそうだけど。そんなニューラはゆっくりと寝ている敵の元へと歩み寄った。そして容赦なく攻撃を与えて気絶させる。

「そこまでやらなくても…」
「こいつら卑怯だからな。起きて何かしてくる前にトドメ刺しとかねぇと」

そしてニューラは私の元へとふらふらしながら近付く。私の前に来た瞬間にニューラはぐらりと倒れた。私は驚きながらニューラの安否を確かめる。

「ちょっと!ニューラが大丈夫じゃないでしょ!」
「ははは、少し張り切りすぎちまったかなぁ」
「…私の背中乗って」
「情けねぇなぁ、俺。…ありがとな」

私はニューラを背中に乗せて歩き始める。ニューラの指示のもと、私は森の中をゆっくりと歩く。しばらくすると開けた場所に到着した。そこはあらゆる木の実が生る初めての場所だった。

「うわぁ…!」
「凄いだろ?他の奴等は多分ここ知らないと思うんだ。俺だけが知ってる秘密の場所。これからは俺とお前だけの秘密の場所だな」

俺とお前だけの秘密の場所。そう言われた事に思わず胸が高鳴って、ニューラの事を直視出来なかった。




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