テレビを付けると愛している人が出ていた。彼は笑顔で歌い、踊り、話し、動く。
その全てがキラキラ輝いていて太陽の様だった。

「おはやっほー!皆、元気かにゃ?」

彼は何時も通りの笑顔で言う。それは何時もと同じ言葉。だけど彼のその言葉は人を飽きさせる事が無く、人々を楽しませる力がある。
私はそんな彼に憧れと尊敬、そして焦りがあった。
彼が他の人を好きになってしまったらどうしようなどと思う様になってきた。自分でもこれ程までに独占欲が強いのかと思う程だ。

だが今の私にはやらなければいけない事がある。独占欲を働かせる位ならやらなければいけない事を先に済ませてからだ。そんな自分へ気力を出させる為に両頬を強く叩く。
私は再び歌詞を考える。曲を作らなければならない。それは彼に歌って貰う為の曲だった。


「ただいま」

そう言って帰ってくる彼…トキヤは笑顔ではあるが少し疲れている様に見えた。
私が「大丈夫?」と聞くと彼は私に抱きついてくる。そして浅い溜息を一つ。
何時もの彼の性格と正反対の人間を演じているからだろう。だが彼はそれを止めようとはしない。その理由は分からない。

考え込んでいた私に彼がゆっくりと言う。
「貴女を見ていると…まるで日向ぼっこをしている気分になりますね。暖かくて、癒される」

細くて綺麗な指が私の頬を撫でる。トキヤは軽く笑い、「膝枕をして貰っても良いですか、今は貴女の膝の上で寝たい」と言う。私は羞恥に少々駆られながらも了承した。


トキヤは人に寝顔などトキヤは絶対に見せない。人に隙を与えないのだ。
しかしそんな彼が私の膝の上で寝ている。寝顔だって見える。それが酷い位に愛おしい。
そんな彼の額に軽くキスをする。すると突然トキヤは起き上がり、私を押し倒した。

ニコッと微笑むと

「不意打ちは、卑怯なんだよ?」

その声、表情、話し方は正に彼と正反対のHAYATOそのものだった。

私は驚愕しつつも言う。
「ト、キ…ヤ?」
「…っ、たまには、僕も君を愛したいんだよ…?」私の耳元に切なく言う。
そして唇を重ねられる。私の心はHAYATOにまで奪われてしまうのか。
そう思うと私は笑みを浮かべた




果てにある最愛


同じ姿、本当は一人、だけど二人に愛されるのも悪くはない――




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企画【深海魚】様に提出させて戴きました。