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「赤也」


空気が、揺れた。
いつもそうだ。この人の言葉は空気を、私たちの心を揺らす。
幸村は、どんな気持ちなんだろう。私のななめ一歩前にいる幸村の、この大きな背中はきっと私たちには到底分かり得ないほどの気持ちを背負っている。


「すまない」


真っ直ぐに赤也の目を見て、私たちみんなが飲み込んだその言葉を幸村は口にした。ジャッカルも、ブン太も、仁王も、柳生も、柳も、真田も、そして赤也も。私を含めたみんなが、幸村を見つめた。


「ゆ、きむら…」

「なん、で部長が謝るんすか…!部長は…」

「負けたのは俺だ」


さっきまで横で千切れそうなほど拳を握っていたあの幸村とは別人のように、強い口調で幸村は言い切った。


「俺がお前たちに優勝旗を握らせてやれなかった」


ああ、さっきのすまないは私たち全員に向けてだったんだね。


「幸村くんだけじゃねえだろぃ…俺達だって」

「…俺もじゃ」

「俺が勝てば立海は優勝できたんだ」



ああ、これか。
有無を言わさぬ口調。それはいつだって私たちに向けられた優しさだったんだ。

優勝、口に出したくもない言葉だった。全部そうだ。さっきの謝罪もこれも、私たちの代わりに全てを吐き出してくれる幸村はやっぱり私たちの部長だ。ごめんね、幸村。
ごめんね、赤也。


「…すまない、赤也」

「なん…」

「立海を、頼んだよ」






ちいさなあのこに全てを託すぼくらは残酷ですか










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少しだけ大人だから、泣かない方法を見つけただけ。前向きになんてなれないのです。



2011.08.14

 




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