逃避行 | ナノ





次の日もその次の日も、柳は同じ行動を繰り返した。私は周りの目もあるからクラスでは苦笑いだけでも返していたけれど、他では完全無視。それでも柳は私に構い続ける。


「今日はここにいたか」


けれど私もそろそろ限界だ。そりゃあこんなストーカーみたいなこと続けられればね。本当はあんまり直接敵意を向けたりしたくないんだけど、柳は言わないといつまでも私につきまとうだろう。その理由は分からないけれど。


「柳くん、」

「柳で構わない」

「…あなたはさあ、何が目的なわけ?いい加減にしてよ、イライラする。気持ち悪い。柳ってストーカー?」


ちょっと言い過ぎかも、とは思ったけど、一度口を開けば止まらなかった。溜まっていたストレスが言葉になって逃げていく。


「ようやく本心を言ったな」


いくら言ってもムカつくことに柳は笑っている。まさか、


「…それが目的?」

「目的の一つ、とは言える」

「じゃあ本当の目的は」


最早疑問符をつける気すら起きない。


「…お前が死のうとする理由を聞きたくてな」

「それなら普通に訊けばいいでしょ」

「お前は嘘を吐くだろう」


だから追い詰めた、と。そういう訳か。何だ、こんなつまんないことに怒って馬鹿みたい。私だってそう簡単にそんなこと話したくはないけど、ストーカー紛いのことをやめてくれるならいくらでも話すのに。






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