逃避行 | ナノ
「おはよう、藍川」
「…おはよう」
昨日結構冷たく突き放したつもりだったのに、席に着くなり柳が挨拶してきたのにはびっくりした。…伝わってなかったのかな。
「今日の昼は空いているか?」
「ごめん、空いてないんだ。ちょっと用があって」
「そうか」
昨日は否定したけど、正直ちょっとカチンと来た。だから遠回しに私に関わるなって言ったのに、どういうつもりなんだろう。何にせよ気分が悪いのには変わらないから、本当は用なんてないのに嘘を吐いた。柳は気にした様子もなく、授業の準備をし始める。やっぱり、私は嘘がうまいらしい。少しだけ、悲しくなった。