そこは御愛嬌。 | ナノ
「やあ、珍しい顔ぶれだね」
病室の扉を開ければ、少しおかしそうに笑う幸村がいた。良かった、今日も元気そう。
「そうでもないよ。最近仁王私に引っ付きまくってるから」
「プリ」
「否定しなよ」
「俺がまなみちゃんにお熱なんは前からじゃ」
「キモいキモい」
あははと笑う幸村の笑顔が心底おかしそうで、何だか嬉しくなる。大村さんの笑顔は確かに綺麗で可愛いけど、やっぱり幸村には適わないかも。
「他のみんなは帰ったの?」
「ああ、六人がかりでお姫様をお送りしちょるよ」
「…仁王、」
機嫌が良かった仁王の顔が、彼女の話になると途端に暗くなった。もともと明るい性格とは言えないけど、こんな嫌味を言うやつじゃないのに。
「お姫様?」
「あー、大村さんって言う女の子」
「へえ、どんな人なんだい?」
「普通にいい子だよ。柳のクラスなんだけど、赤也も懐いててさ。今日部活に見学に来てたの」
私が話してる間、ちらっと見たら仁王はまたあの表情をしていた。
一応言っておくが、私が大村さんに関わりたがらなかったのはもちろん私自身が色々疑ってたのもあるけど、みんなが彼女に何らかの影響を受けて、部活が疎かになってしまうんじゃないかと思ったからでもある。けれど仁王の表情はそのどちらとも違う気がする。ただ分かるのは彼女を良く思ってはいないということだけで、その理由は私に言った言葉と関係あるんだろうか。
「まあそんな女の子を一人で帰すわけに行かないからね」
「…私だって女子なんですけど」
幸村も察したのか、それ以上大村さんの話をするのは止めた。話の転換の仕方はむかつくけど。
「ふふ、分かってるって。仁王がいなかったら流石に俺もあいつらを許してないよ」
「…どうだか」
「本当だよ。ほら、二人とももうこんな時間だから帰りなよ」
何だかはぐらかされた気がするのは気のせいか。まあ時間が時間なのは本当だから、さっさと帰るとしようか。
「またね」
「ああ、またね。…仁王、」
「何じゃ?」
「まなみのこと、守れよ」
「…分かっとる」