そこは御愛嬌。 | ナノ
その日の部活、正確には休憩時間の間、仁王は真田にこっぴどく叱られた。お前を仲間に入れてやろうとした大村の手を弾くとは何事だ、そもそもお前には協調性というものが足りない、などと怒鳴る真田の話を仁王は珍しく何の反論をするでもなく聞いていて、ただその合間に何度か謝っているだけだった。
それで今回ばかりは反省していると分かったのか、真田のお説教は長く続くことはなかった。だけど仁王のあの表情は違う。反省しているんじゃなくて、うなだれているというか、私にもよく分からないけれど。
「仁王、反省してないでしょ?」
「しとるしとる。何なら今からでも土下座しに行きたいくらいじゃ」
「…あ、真田あっち行っちゃった」
「誰が反省なんぞするか」
…素直というか何というか。
テニスのことならともかく仁王が反省なんかすることはほとんどない、らしい。それはいつも自分を信じて行動しているからだ、と以前仁王自身が言っていた。
「まあそれはいいとして、仁王、何であんなことしたの?」
「…ピヨ」
「真面目に答えて」
「何されるか分からんきそれには答えられん。ただ、」
「ただ?」
何されるか分からないって、大村さんにか?と聞いても返事はなさそうなのでそこはスルーする。
「おまんはあの女にあんまり関わらん方がええぜよ」
「は?」
「俺は適当にかわさせてもらうがの」
あの女、とは話の流れからして大村さんでいいんだろう。
もしそうなら言われなくても彼女とはあまり関わらないつもりなんだけれど、仁王がわざわざ私にそう言うってことは、やっぱり大村さんには何かあるんだろうか。
「ていうか、何で私限定?」
「何となく、」
「じゃないでしょ」
「…理由は言えん。とにかく用心しときんしゃい」
タイミング良くかかった休憩終了の号令のせいで、私はそれ以上仁王を問い詰めることはできなかった。