そこは御愛嬌。 | ナノ
「じゃあここで」
そう言うと、前を歩いていたみんなも振り向いた。
「え、まなみ先輩一緒に帰らないんすか?」
「ここ寄るから」
「マジっすか…」
「じゃあね赤也、みんな。また明日」
みんながそれぞれに「また明日」と言ってくれる中で赤也だけがしゅんとしていて、ばっと顔を上げたかと思えば、
「明日は一緒に帰りましょーね!!」
なんて可愛いことを言ってくれた。
あまりの可愛さに笑顔で頷けばまた可愛いもので、すごく嬉しそうにしてくれた。ああ可愛い抱きつきたい。
「気をつけて」
「うん、幸村こそ今日はゆっくり休んで」
「ふふ、分かってる。また明日」
手を振る幸村とみんなに振り返して、歩き出すみんなと同じように、私も暖房で温かくなった本屋に入った。
本屋に入ればさすが人気なだけあって、目当ての雑誌はすぐに見つかった。けれどせっかく寄ったのにすぐに帰ってしまうのはちょっともったいない。そう思った私は他の本も見に行こうとして、時間が時間なのを思い出した。
幸村にも心配されてしまったし、しょうがないか。
「ありがとうございましたー」
本屋から出た途端、また厳しい寒さが覆って、思わず身震いをした。そのせいか割と近くから聞こえた救急車のサイレンがやけに耳につく。
みんなといる時はあんまり感じなかったのに、今日はほんと寒いなあ。
バッグから取り出したマフラーを巻きつけながら、駅に向かって歩いた。