そこは御愛嬌。 | ナノ
ニコニコとした赤也の横顔を眺めながら歩いていると、ふと前の方に本屋が見えてそういえば欲しい雑誌があったのを思い出す。どこのコンビニも売り切れだったけど、本屋ならあるかもしれない。
「ねえゆき…」
それを告げようと幸村を見上げると、目の前の肩がこちらに傾くのを見て思わず言いかけた言葉が止まった。
「…幸村?」
「ああ、ごめん。当たった?」
「いや、大丈夫だけど……幸村ちょっと顔色悪いよ」
「本当?少し疲れたのかな」
珍しく苦笑いを浮かべた幸村に、少し心配になる。あれだけ厳しい練習をしていれば、幸村だけじゃなくみんな多少なりとも疲れるんだろう。
「それよりどうしたんだい?何か言いかけてただろう?」
「ああ、私本屋寄ろうかなって思って。遅くなったら悪いし先帰ってていいよ」
「…大丈夫かい?」
「大丈夫大丈夫」
心配そうな顔をするからへらりと笑えば余計に心配する幸村。何よその顔。
「大丈夫だって。幸村今日夕飯焼き魚でしょ」
「え?何でそのこと…」
「今日何か嬉しそうな顔してたし」
本人には顔に出てた自覚はなかったようで、幸村ははにかむように笑った。さっきとは反対の笑顔で、そうしてると普段落ち着いてる分年相応に見える気がする。別に幸村が老けてるって訳じゃないけれど。