やくそく
教室の前に到着した。

(緊張する)

そういえば、アナグラに来た日も緊張してたな。なつかしい。

いや、思い出に浸っている場合ではない。
さあ教室に入るか。

ドアに手を伸ばそうとしたら近づいてくる足音が聞こえた。

「まだ入ってなかったのか」

「ソーマ、はやくね?」

「お前が遅いだけだろ?道にでも迷ってたのか?」

「……迷ってたけど、悪いか!」

「いや、姿を確認出来て安心した」

「は?それってどういう……」

タイミングよく扉が開く音に俺の言葉はかきけされる。

「あんた達が新人?」

「え、あ…おう!」

「よかった。遅いから探しに行こうと思っていたんだ。入って」

教室の中に招かれる。
俺が入ろうとしたらソーマに腕を捕まれた。

「え、入らないの?」

そう聞くとソーマはしばらく教室を睨んだのち俺の腕をはなす。
そしてさっさと教室に入っていった。

(……なんだよ、あいつ。先に入りたかっただけか……?)

まだまだ子供なんだな。そう思うことにして俺も続いて教室に入った。


*****

気付いたら、自室だった。

「ソーマ、俺達……授業受けたよな?」

「……確証がない」

この返答からすると、違和感を感じたのは俺だけじゃないみたいだ。

「なんで思い出せないんだろ……。歳かなぁ……」

「……」

「あれ、反応なし?」

「コウタ」

「?」

「ちょっと出掛けてくる」

「え……あ、ああ。行ってらっしゃい」

俺はソーマを見送る。

とりあえず難しいこと考えても仕方ない。

「俺も散歩しようかな」

ふと、窓の外に視線を向ける。
昨日見た黒いものがいた。

「!」

気になる。
部屋をとびだして黒いものを追いかけた。

外に出ると空気が冷たく感じた。
まあそんなことはどうでもよくて。

「多分あれも調査対象だよな…」

「調査ってなんの?」

「!!!」

いつの間にか背後に、教室にいたやつが立っていた。
ちょっと心臓に悪すぎだろ。
でも……

「ちょうどよかった。お前アレなにかわからない?」

「知りたいの?」

「ああ」

「教えてあげてもいいけどさ、そのかわり、ソーマだっけ?彼を明日貸してくれるかい?」

「なんで?」

「話を聞きたいんだ」

「……」

ソーマとひきかえにか……。
まあ一日くらいならいいか。

「いいぜ」

「じゃあ決まりだ。明日この時間にこの場所にきて」

「わかった」

「約束だからね」

そういって去っていった。

「あ、名前……」

聞くの忘れた。


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