「コウタ、キョロキョロしてどうした」
「はじめてみる建物だから気になって」
「のんきなやつだな」
俺とソーマは寮の部屋に案内された。
部屋は同室。
色々な説明は明日すると言われたので今日は部屋で休むことにしたのだが、俺は今テンションが上がっている。
「ねえ、ソーマ!今から敷地内探検しない?」
「もうアラガミ探しをするのか?」
「仕事は抜きで、ちょっと色々見て回りたいんだよ」
「……」
「いや、ソーマが行きたくないなら俺一人でいくけど」
無理強いはしたくないし、と俺がいうとソーマは少し悩んでからついていくと言った。
一人で回るのは心細かったので俺は少し安心した。
*****
「とりあえず敷地内の大まかな地図もらっててよかったね」
外に出て10分で俺たちは道にまよい、よくわからない木々に囲まれた道を歩いていた。
「地図読めるか?」
「読めるに決まってるだろ!」
「ちなみに方向的には地図逆だ」
「え、嘘!?……いや、わかってたよ!ちゃんと読めてるよ」
「北は?」
「上だろ?そのくらい余裕だぜ」
「……上……」
ソーマはあわれんだ眼差しをこちらに向けてくる。
なんなんだ。失礼なやつだな。
俺が文句を言ってやろうと口を開くと同時に近くの茂みが揺れた。
ガサガサ
「!?」
「おい、なんで俺の後ろに隠れる」
「ななな、なにかいる!」
「風か何かだろ。アラガミと戦ってるくせに今さら何怖がってるんだ」
「……あ、それもそうか」
冷静になるとそうだった。
なにも怖がる必要はなかった。うん。
俺は茂みに近づき正体を確認しようとする。
すると茂みから黒いものが飛び出してきた。
「うわっ……!?」
とっさに手で払おうとしたら、その黒いものは手をすりぬけた。
「え……」
黒いものはそのままどこかに行ってしまった。
(なんだったんだ?)
「大丈夫か?」
「……ソーマ」
「あ?」
「今のって、なに?」
「さあな。少なくてもアラガミの類いではないだろうな」