ふと、一人になりたくて外出をしようと思った。
愚者の空母。そこにコウタの姿があった。
ミッションにでも来ていたのだろうか。
近づけば気配を感じ取ったのかコウタは俺の方を見た。
「あ、……お前がここにいるなんて珍しいな」
そう声をかければ、コウタは泣いていたようで涙を指先でぬぐっている。
「なんで、泣いてるんだ?」
「いや……えっと、ごめんな……」
「謝る必要はないけど……」
「……ごめん」
「……」
俺はコウタの手を握る。
コウタは新型ではないから感応現象だなんてものは起こらなくて少々不便に感じた。
「……俺、夢を見たんだ。皆がアラガミに襲われる夢」
「それは不吉だな」
「だから皆を助けられるようにしたいのにさ……届かないんだ。皆みたいにうまくいかない……。俺じゃ誰も幸せにはできないのかな……」
「コウタ」
「なに?」
「デートしようか」
「……え」
「でもここじゃ寂しいから、そうだな……アラガミがいなくなった世界を想像しよう。想像デート!妄想でも構わないから考えよう」
「それは斬新だな」
「このカダーヴル様をなめてはいけないぜ!常日頃からコウタとのデートは妄想してるからな」
「ひくわ」
「まじで引くな!……たとえば、ここにたくさんの木や花あるとするだろ?」
「ああ」
「そこにコウタと遊びに来てさのんびり昼寝をする」
「あえて昼寝なんだな」
「あ、そのまえに昼飯を俺が作っていったことにしよう。サンドイッチ!」
「カダーヴルの料理まずそう」
「コウタは作れないだろ」
「サンドイッチくらいはできると思う」
「じゃあ、コウタが作ってくれたことにして、それを食べて昼寝して気づいたら夕方でさ」
「あまりにも無駄に時間をすごしたデートだな」
「どうせ当たり前のように明日がくるんだ。だから無駄な時間をすごしたっていいと思う」
「そんな日常があったらいいのに」
「だけどそんな、もしもの世界なんてどこにもなくてさ、明日が来るかどうかも今の俺達にはわからない。……それでもアラガミのいない世界と現実変わらない想いはある」
「なに?」
「俺はお前がいる世界ならどんな状況だって幸せだ」
「……さむい」
「あれ?」
ここは感動して泣いてくれる場面じゃないのか?
「カダーヴルのせいで涙がかわいちゃったよ。ありがとう」
コウタは笑いながら言った。
俺は少々もやもやしながらも「まあいいか」と思い笑う。
「帰ろうコウタ」
「うん」
***
「カダーヴル」
アナグラに付いてコウタに声をかけられた。
「うん?」
「俺にとっても、お前は幸せだから」
「えっ!突然なに…」
「だから……」
……言い終わったあとコウタは恥ずかしくなったのか照れてさっさといってしまった。
喜怒哀楽忙しいやつだ。俺は苦笑しながらコウタの元にむかった。