「ナナ、行こうぜ」
「うん!訓練一緒にだなんて何をするんだろうね。あ、訓練終わったら一緒におでんパンたべよーよ」
「毎日おでんパンって飽きない?」
「全然!おいしいからね」
そんな話をしながら俺達は集合場所に向かう。
「来たか」
すでに集合場所にいたジュリウス隊長が言った。
「待たせてすいません」
「フェンリル極致化技術開発局ブラッド所属 第二期候補生二名到着いたしましたぁ」
(長い台詞かまずによく言えるな。すごいぞナナ)
俺はナナを少し尊敬しつつ隊長に目を向ける。
「ようこそブラッドへ。隊長のジュリウス・ヴィスコンティだ。それでは今より実地訓練をはじめる」
「……えっ?」
ナナが驚いた表情をうかべる。
「見ろ、あれが人類を脅かす災い駆逐するべき天敵アラガミだ」
訓練用アラガミとは違う。本物のアラガミ……。
「手段は問わない。完膚なきまでにアラガミを叩きのめせ、いいな」
「えっ、あの。これって実戦ですか?」
「本物の戦場でやってこその実地訓練だ。お前達が実力を発揮さえすれば問題になるような相手じゃない」
そう隊長が言い終わると、タイミングよくアラガミが襲いかかってきた。
俺はとっさにナナをかばう。
「……?」
うすらと目をあけるとアラガミはジュリウス隊長の腕に噛みついていた。
ジュリウス隊長は神機の刀身でアラガミを斬る。
「古来より人間は強大な敵と対峙し常にそれを退けてきた」
隊長は何事もなかったかのように言葉をつづける。
「鋭い牙も強靭な爪ももたない人類がなぜ勝利したのか。共闘し連携し助け合う戦略と戦術を……人という群れを一つにする強い意志の力。それこそが俺達人間に与えられた最大の武器なんだ。それを忘れるな」
「意志が…最大の武器…」
理解するのが難しい。
いつかわかる日がくるのだろうか……。
「時間だ。いくぞ」
ジュリウス隊長はそう言ってアラガミの方へ歩き始めた。
俺達もそれを追う。
††††
目標を倒し終わると、さらにアラガミがやってきた。
オウガテイルとのにらみ合い。
「なかなかいい動きをするな、新入り」
ジュリウス隊長が話ながら俺達の前へと移動する。
「いい機会だ、お前たちが目覚めるべき血の力をここで見せてやろう」
ジュリウス隊長が神機を振りおろすと同時に俺は何かがこみあげてくるのを感じた。
「力が…みなぎる…」
「いまからブラッドアーツを目標に対して放つ。少し離れていろ」
「ブラッドアーツ?」
「戦況を覆す大いなる力。戦いのなかどこまでも進化する刻まれた血のなせる技」
ジュリウス隊長の攻撃はアラガミを一瞬で葬った。
「これがブラッドアーツだ」
「は……はぁ……」
すごすぎて開いた口が塞がらない。
「俺達ブラッドに宿る血の力。そしてブラッドアーツ。これをどう伸ばしどう生かすかは全てお前達の意志次第だ。覚えておいてくれ。いいな」
初めての実地訓練は終わった。