ふりまわされるひ
「ソーマ」

「……」

「ソーマ……」

「……」

「返事がない。屍のようだ」

「うるさい」

べしっとソーマは持っていた本で俺を叩いた。

「聞こえてるじゃん」

「たまには静かにしていたい」

「ソーマあまりしゃべらないからいつも静かだろ?」

「お前がうるさいって話だ」

「……じゃあ静かにする」

「そうしてくれ」

「……」

「……」

「……」

しばらくの静寂。
俺はしゃべりたい衝動にかられつつも耐える。
するとソーマが口を開いた。

「……不気味すぎる。やっぱりお前は静かにしなくていい」

「なんだよ……不気味って失礼すぎるだろ」

「お前が喋っていないとこうも不安になるんだな」

「不安になるの!?そんなに違和感ある!?」

「とにかくお前は騒いでてくれ」

「いや、そういわれると騒ぎにくいんですけど……」

俺は苦笑しつつソーマの隣で何を話そうか考え始める。

「そういえばコウタ、なんであんなにしつこく名前呼んできたんだ?」

「あ……」

そう言われて思い出した。
榊博士に大事な用件頼まれてた気がする。
しかし……

「今の流れで忘れたよ!!もう一回聞いてくる!」

俺はダッシュで榊博士のもとに向かった。

*****

「ソーマ、聞いてきたよ!」

「おつかれ。俺が直接榊のところに行けばよかったんじゃないか?」

ソーマがそう言って俺も気付いた。確かにそうだ……。俺が走り回る必要は全くなかったはずだ。

「……気づいてたなら先に言えよ!」

「言う前に行ったのはお前だろ」

「う……」

「後から何かおごってやるからそんなに落ち込むな。初恋ジュースでいいか?」

「全然よくねーよ!なんであえてチョイスが初恋ジュースなんだよ!って話を聞け」

俺の言葉を全スルーしてソーマは去っていってしまった。

残された俺はソーマが帰ってくるまでソーマが読んでいた本を読むことにして本を開いた。

当然内容は理解できなかったけれども。


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