どちらともなく熱を求め互いの肌を重ねれば、彼という存在を直に感じた。手繰り寄せた腕はやはり男のもので、それを確かめるたび私はひとり安堵する。 私たちの不器用な愛は、いつだって行き場を求めているのだ。 「ナマエさん、」 彼に比べれば一回りも二回りも小さな私の身体は、後ろからすっぽりと抱きすくめられてしまう。 彼の香りを胸いっぱい取り込んだならば、私はたちまち幸福に包まれた。 「これが幸せって言うんでしょうね。貴方がいて、僕がいて、それだけで良い」 「……ねぇ、くすぐったいよ」 「…………」 「ん、ちょっとバナーナビーったら。聞いてるの?」 いつになく甘えたな彼は私の肩口に頭を預けたまま耳元で話すものだから、やんわりとその頭を押し返す。 それでもイヤだと言わんばかりに無言を貫き、まるで犬か何かのように、ぐりぐりと顔を押し付けるバーナビー。そんな彼がなんだかとても可愛く思えてしまって、私はきれいなブロンドをそっと撫でた。 「せっかく良いムードだったのに、何で止めたんですか」 「別にそういうつもりじゃないってば」 「本当ですか」 「本当よ。くすぐったかったんだもの、仕方ないでしょう。ね?」 「……そんな顔、反則ですよ。何も言えなくなる」 そんな顔って一体どんな顔よ。言い掛けた言葉は飲み込んで、私は無意識に頬を緩めた。 自己幸福論 20111127 |