微睡む意識の中で瞼を上げれば見慣れた自室の一角が目に入る。 カーテンの隙間から僅かに漏れる朝日が眩しくて寝返りをうつと、そこには視界いっぱいに広がる穏やかな彼の寝顔があった。 「幸せだなぁ」 今までにない程の幸福感に包まれた私は、すやすやと寝息をたてるバーナビーの髪へと手を伸ばす。 起こさないように細心の注意を払いながら、絹のような金色のそれに指を滑らせた。そうっと、親が子供にするように優しく。 何度か往復して、きめ細やかな肌に触れようとした瞬間に彼が目を覚まし、私は寸でのところで手を止める。 「あー…えっと、ごめん。起こしちゃった?」 「いえ。とっくに起きてました」 「……うそ」 「残念ながら本当ですよ」 どうやら彼の方が一枚上手だったらしい。それでも、あおい瞳を優しく細めて自然に口角を上げる彼を見てしまえば私の負けだ。 そんな些細なことなど、どうでも良く思えてしまうからいけない。 結局、私という女はいくら足掻いたところでバーナビーには勝てっこない。それだけの話なのだ。 「拗ねないで下さい」 「別に拗ねてなんか、」 言いかけたところで思わずフリーズする私。それもそのはず。 頬には僅かに残った小さな感触。してやったり顔の彼を力無く睨みつつも、無意識ではあるが視線はだんだんと逸れてしまう。 「さぁ、そろそろ起きましょうかね」 ちゅ、とまた随分可愛らしい音を立てて頬に口づけたバーナビーの足音を背後に聞きながら、赤くなった頬を隠すように枕に顔を埋めた。 どうしたものか、隣に残った熱が酷く愛しい。 温もりで染めた朝 20111004 |