首無 | ナノ



――本日は全国的にさわやかな青空となるでしょう。


今日は片想い中の静雄さんとご飯を食べに行く。

ひょんな事から彼の方から誘ってもらったのだが、私としてはとても大きなチャンス。

少しでも静雄さんと釣り合うよう、いつもより控えめな大人っぽい化粧に、白いワンピースなんて着ちゃって。

我ながら今日の私は完璧かもしれない、なんて思った。


「なまえ!悪いな、待ったか?」

『いえ!私もさっき来たばっかりだから大丈夫です』

「じゃあ、行くか」

『はい』


静雄さんと並んで少し歩き始めたころだった。

ポツリ、ポツリ、と落ちてきた滴がコンクリートに黒い水玉模様を描いてゆく。


「うわ、雨かよ」

『天気予報の嘘つき……あ、そういえば』


この前出掛けたとき、入れたままにしてあった折り畳み傘を思い出した。

運が良いやら悪いやらよく分からないが、この際なんでも良い。


「お、傘持ってんのか」

『これ使っていいですよ。私、ちょっと近くのコンビニ行ってきますね!』


近くにコンビニがあったのを思い出して、静雄さんに傘を渡して走り出そうとした時だった。

後ろからグイッと腕を引かれ、急に雨が当たらなくなる。


「一緒に入れば良いんじゃねぇか?」

『あ、いや、でも静雄さん濡れちゃってますから。風邪ひいたら大変です』

「それはお前もだろ。ほら、こうしてれば少しは濡れねぇし」


そう言って大きな手に肩を引き寄せられた。

ということは。いわゆる相合い傘をしているわけだ、私達は。


「な?」

『す、すいません』


覗き込まれた顔が近すぎて、嬉しいのと恥かしいので死んでしまいそうだった。

触れ合っている右肩に熱が集中していくような気がする。


「もうちょっとで店着くから、それまで我慢してろ」

『……はい』








時間を止めて



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