歪曲アーク2 | ナノ

 
 
ミンミンと響く蝉の声が相変わらず気にさわる夏、真っ只中。本当にうるさい。なんて本当は蝉に罪は無いのだけれど、ちょっとした八つ当たりである。

眼前に並ぶのは、ちっとも頭に優しくない文字や数字の羅列たち。いよいよ耐えきれなくなったところでシャーペンを放り出す。


『いったぁ…、』


床へ腰を降ろし大きく後ろに倒れ込んだのは良いものの、ちょうど頭の位置にあったゴミ箱にぶつけた。

ゴン、と音を立てて私と同じく倒れたそれ。きっとアイスの袋やら消しカスやら、中身が投げ出されたに違いない。まあ、あとで直せば良いか。

あれから、一体何日が過ぎたのだろう。特に何も起こらない学校の補習へ行き、時に文化祭の準備を手伝い。ただひたすら無駄なことを考えないようにと、何もかも集中して作業へ取り組んだ。

それが今はどうだろうか、張り詰めていた糸が切れたような気分だった。自分は何に追い詰められていたというのだ。もはや理由さえ思い出せない。


――じゃあ、私もその中に入ってる?


我ながら馬鹿なことを聞いた、と今になって思う。けれど後悔先に立たず。そんなことを考えても、あの時、あの瞬間は消えたりしない。

思い出せない、と言ったら嘘になる。本当は自分でも理解しているはずだ。それでも思い出したく、ないのだろう。私は弱い。

何を言われたわけでもないというのに、否、それが哀しいのかも知れない。人間を愛していると豪語する彼――折原くんに“拒否”されたことが苦しいのかも知れない。

この胸の痛みに名を付けるには私はまだ些か無知すぎたのだろうか。心が痛い。小さく悲鳴を上げているようだと思った。





人はこれを青春と呼ぶのであれば
 
 





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