『何で私、こんなことになってるんだろう』 俺にしては珍しく静かに、今日の昼食であるコンビニのパンを咀嚼していたところで隣に座る彼女は口を開いた。 ふと、彼女の手元の可愛らしい弁当箱になんとなく視線がゆく。手作りだろうか。だとしたら実に興味深い。 「いただきますよっと」 『ちょ、私の卵焼き…!』 不本意にも手で直接取ることになってしまったが仕方ないだろう。 そんなことを思いながらもぐもぐと、彼女から頂いた(…というか、俺が勝手に奪ったんだけどね)卵焼きを味わう。 「……おいしいんだけど」 『何で上から目線?』 「だってさぁ、小春ちゃんの弁当だよ?」 『え、何?折原くんったらそんなに私をイラつかせたいの?』 「えー。だってほんとのことじゃん」 『……平和島くんがいれば良かったのに』 どこか遠くを見るようにして俺から目を逸らした彼女の口から出た、忌々しき天敵の名にポーカーフェイスも忘れて盛大な舌打ち。 すると少し驚いたような顔でこちらに視線を戻した。 全く、何だって言うんだ。そんな物珍しそうな目で見るなよ。俺を何だと思ってるんだ。 『お、折原くんも人間だったんだね…』 「ねぇ、君は喧嘩売ってるのかな?」 『ううん、売ってないよ。っていうか折原くんになんか勝てるはずないでしょ』 にっこり。先程までの明らかな嫌悪を露わにしたそれとは打って変わって急に楽しそうに微笑むものだから、俺の心臓がギュウと握り潰された気がした。 あぁ、もう。だから何だって言うんだ。内心悪態をつきつつ今度こそ顔に出ないよう、細心の注意を払う。それが無駄だとも知らずに。 『いつもは同じクラスじゃないし…なんか、こういうの新鮮だよね』 がらがらと、心の中で何かが音を立てて崩れる。 これはきっと暑さの所為だから |