つい数分前までの元気はどこへやら、どこか勢いのない折原くんを横目に足を進める。 いつもの彼なら足が短いだ何だと言って、私のことをバカにしながら一人進んでしまいそうなところだが、そんな様子は微塵も感じられない。 ちらりと斜め上へと視線をやれば見事に目が合ってしまい、思わずその場に停止する。数秒の沈黙の後、やっとの思いで「楽しかったね」とだけ口にした。 「……うん、」 と、それだけ言った折原くんはそろそろと自転車を押す作業に戻る。呆気にとられていた私は慌てて彼の背を追った。 一体、あの饒舌さはどうしたというのだろうか。不気味なほどの静けさはどうにも身に堪える。 具合が悪いのかとも考えたが、見た感じ何とも無さそうだ。彼に限って食べ過ぎたなんてこともないだろうし、何より野菜を尽く避けていたので、大した量は食べていないはずである。 『折原くんって野菜嫌いなんだね』 「そうだけど」 『意外だったなぁ』 「なんで」 『その、なんていうか、えっと…何でも出来ちゃうイメージ、みたいな…?』 「……俺だって、完璧な人間じゃない」 絞り出したような、心なしか震えた声。明らかに、普段の彼のものではない。何か思い悩むようなことでもあったのだろうか。 先程までは全くそんな雰囲気さえ感じさせなかった彼が、ここまであからさまに、無防備に、弱々しい発言をするなんて思いもしなかった。何と声を掛けて良いかさえも分からない。 時折ふたりの脇を通る車のエンジン音がやけに耳に響く。 『お、折原く、』 「着いたよ」 たぶん、そこで初めて顔を上げたのだと思う。慌てて辺りを見渡すと、そこは確かに見慣れた風景。 そんなに長い間、黙って歩いていたのだと思うと色々な意味で驚きだった。何より、一向にこちらを見ようともしない彼が気になって仕方ないというのに。 「じゃあ」 その背も追えず |