ふいに伝わる振動。ディスプレイに映し出されたのは見慣れた先輩の名前。 土方さんにテロリストと思わしき4人組の追跡を命じられていた山崎さんだ。 「奴等、池田屋ってホテルに入っていった」 『分かりました。このまま現場付近へ向かいます。目標を確認し次第副長へ連絡、ということでよろしいですか』 「優衣ちゃんは相変わらず頼りになるね。頼んだよ」 『まだまだ山崎さんには劣りますけどね。任せて下さい』 拠点をおさえたという山崎さんの報告を受けた私は、付近のビルへ足を向けた。 しばらく誰も立ち入っていないのだろう。壊れた鍵を開け屋上に入り、細心の注意を払いながら望遠鏡を覗く。 空いた方の手で携帯を取り出して別の場所で待機する土方さんへと繋げば、すでに準備は整っているようだった。 『現在池田屋というホテルに潜伏中の模様。桂以外にも多数の攘夷浪士を確認』 「分かった。優衣はそのまま山崎と合流してこっちに来い。俺等は一足先に乗り込む」 『了解しました。あまり無茶はしないで下さいね』 「あぁ、お前もな」 『はい。それでは』 再度山崎さんに連絡して落ち合う場所を伝え、役目を終えたそれを再びポケットへ滑り込ませた。 久しぶりに耳にした、少し弾んだ声。楽しそうに口元を歪める上司を思い浮かべれば自然と頬が緩んでしまう。 『真選組の晴れ舞台だ、とか言ってそうだなぁ』 きっとあの人のことだ、顔には出さずに内心張り切っているんだろう。 連絡から数分で見えてきたパトカーに苦笑いしながらも、窓から顔を覗かせた山崎さんに小さく手を振ると屋上を後にした。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |