「悪気は無かったんです。……ただ、仕事も無かったんです」 うだるような暑さの中、ミンミンと己の存在を主張し続ける蝉たちは一向に鳴き止む気配もない。 そんな彼等とは対照的に血の気を失った顔で逆さ吊りになっている万屋一行。もちろん止めはしたのだが、天下のドS様には勝てるはずもなく。 「夏だからオバケ退治なんて儲かるんじゃねーのって、軽いノリで街ふれ回ってたら…ねェ銀さん?」 「そーだよ俺昔から霊とか見えるからさ〜それを人の役に立てたくて」 『だそうですよ、土方さん』 「相手にするだけ無駄だ。あんな胡散臭ェ野郎ほっときゃ良いんだよ」 「あっ、君の後ろにメチャメチャ怒ってるババアが見えるよ総一郎くん」 「総悟でさァ」 そんな見え見えの嘘で沖田さんが動揺するわけがないだろうに。坂田さんの苦し紛れの一言に、相変わらずの表情で「きっと駄菓子屋のババアだ」と切り返す彼にはもはや感心すら覚えてしまう。 どちらも嘘八百というか、何というか。二人のどうしようもないやり取りに呆れつつ、青白い顔の少年とチャイナ服の少女を横目で見遣る。本当に可哀想に。 「おいトシ。そろそろ降ろしてやれよ。いい加減にしないと総悟がSに目覚めるぞ」 「何言ってんだ近藤さん。アイツはサディスティック星からやってきた王子だぞ。もう手遅れだ」 『土方さんの言う通りです』 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |