かしづき給ふ | ナノ

 
 
某日、真選組屯所にて。


「あれは今日みたいに蚊がたくさん飛んでる、暑い夜だったねェ…」


夜だというにも関わらず大広間にぞろぞろと集まった私達は、いつもの隊服ではなく私服に身を包み、うちわを持ったりお菓子を持ち寄ったり。

思い思いのスタイルですらすらと語られてゆく怪談話に耳を傾けていた。


「俺、友達と一緒に花火やってるうちにいつの間にか辺りは真っ暗になっちゃって。いけね、母ちゃんにぶっ飛ばされるってんで、帰ることになったわけ」


独特の語り口調に思わず聞き入ってしまうが、丁寧に手に持った懐中電灯で顔を照らしているせいで恐怖が倍増している。正直言って本当に怖い。

近藤さんと山崎さんの間に入る形で腰を降ろした私は、気付かれないようにそっと彼等の着物の裾を握った。


「そしたらさァ、もう真夜中だよ?そんな時間にさァ、寺子屋の窓から赤い着物女がこっち見てんの」

『赤い着物の女?』

「うん、真っ赤な着物だよ。俺もうギョッとしちゃって。でも気になったんで、恐る恐る聞いてみたの。何やってんのこんな時間に、って」

『えっ…は、話し掛けたんですか?』

「そうそう、それでね。そしたらその女、ニヤッと笑ってさ……、」


着物を握る手に力が入る。彼がすぅと目を細めたのを見て、その場にいた全員が息を呑んだ。
 
 



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