「なぁ、トシに優衣ちゃん」 『何でしょう、近藤さん』 祭の囃子や太鼓の音が響く中、真選組総出で将軍様の護衛という何とも重大な仕事を任されてしまった私たち。 過激派の攘夷浪士のなかで最も危険とされている高杉晋助が江戸に来ているという情報があり、祭が始まる前から既に厳戒態勢であった。 「総悟の奴がウンコしに行くっつったきり全然戻らんのだが」 ――はず、だったのだが。流石は沖田さんと言ったところであろうか、既に彼の姿はどこにも見当たらなかった。 聞いた隣の土方さんが眉間に大きく皺を寄せ、盛大な舌打ちを零す。 「あの野郎またどっかでサボってやがるな」 「トシ、他の誰を疑おうと構わんが仲間を疑うことは俺が許さん。俺は総悟を信じる」 『こ、近藤さん…』 「きっとウンコのキレがものスゴく悪いんだ。俺はそう信じたい!」 力強い言葉にせっかく心打たれていたというのに、流石に次の一言には何と言って良いか困った。この不意にくる天然さが無ければ本当に頼れるひとなのだけれど。 と言っても、彼の視線は相変わらず台上の踊り子へ向けられたままではあったが。 「そんな信じ方される位なら疑われた方がマシだと思うがな。そして優衣の前で平気でウンコ言うな。教育に悪い」 「おぉ、それはスマン」 「それより山崎の野郎おせーな」 「なんだ?何かあったか?」 『いえ、山崎さんならたこ焼きを買いに』 「あぁ。お上が食いてーって」 「…ったく。呑気なモンだぜ」 『あ、噂をすれば』 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |