『土方さん、発見ました』 「どこだ」 『あそこです』 ガッ、ゴッ、と凄まじい音を出しながら殴られている上司を指差す。すると隣からはいつも以上に大きな溜息が聞こえた。 近藤さんには悪いが、私にはあの状況に立ち向かってゆく勇気はないので見なかったことにしよう。 「いや、あの人が警察らしーんスよ」 「世も末だな」 「……悪かったな」 ずんずんと進んで行った土方さんの後を追う。 彼が見下ろす先には、綺麗な銀髪に怠そうな目をした男性。近藤さん事件のときの彼だった。 「お、あん時の」 『お久しぶりです。近藤さんがご迷惑をお掛けしているようで申し訳ありません。ええと…』 「あー、そういや名前教えてなかったっけ?」 『え、あ、はい』 先程までとは全く打って変わって、優しく微笑んだ彼に思わず拍子抜けしてしまう。 それに気付いたらしい彼は、戸惑い気味の私を安心させるかのようにニッコリと笑顔を作った。 「坂田銀時っつーんだ。銀ちゃんでも銀さんでも好きに呼んでくれて構わねェから。仲良くしてねー」 『真田優衣と申します。こちらこそよろしくお願いします、坂田さん』 「あれ?坂田さんっつった?何でそんなに遠いの?気ィ遣わなくていいのに」 『いえ、いくら初対面でないとは言え目上の方ですから』 「……オイ、」 いつまで喋ってやがる。そう言って腕を引いた土方さんが彼を遮るように私の前に立つ。どうやら機嫌が悪いようだ。 今のやり取りに何か気に障ることでもあったのだろうか。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |