『…っ、近藤さん!?』 思わず勢いよく起き上がって見覚えのない部屋にだんだんと冷静さを取り戻す。周りを見渡しても誰もいないようだった。みんな何処へ行ってしまったのだろうか。 重い身を叱咤しながら立ち上がり、近くに畳んであった自分の上着と愛刀を身に付ける。改めて感じたその重みに少し胸が痛んだ。 とりあえず自分が居る場所だけでも把握しようと襖を開けると、すぐ目の前は外だった。しかもご丁寧に私のブーツがきちんと揃えて置いてある。 『土方さん、かな?』 いつも世話を焼いてもらっている上司を思い浮かべながら心の中で小さく謝罪した。あとで会ったらきちんと謝って礼を言おう。 そして不意に鼻を掠めた焦げ臭さに顔をしかめる。自分の鼻を頼りに謎の臭いを辿ると、そこにいたのは見慣れた隊服と張り付けにされたカエルだった。 「起きたんですかィ」 『いや、あの、何やってるんですか』 「カエルの丸焼き」 『なっ…!?』 「冗談に決まってんだろィ」 いつも通り悪戯っ子よろしくニヤリと笑った彼はどう考えても本気に見える。恐ろしや沖田さん。 ついでに言うと後で土方さんにバレたときが怖いのではと思ったが、彼ならどうってことないのだろう。毎日のように襲撃を受ける上司を思いだして思わず頭を抱えた。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |