それは本当に一瞬の出来事だった。音がして、彼は依頼人を庇う形で倒れ込んで。 これはもしかして夢なのではないか、とか。疲れていたせいでこんなものを見てしまったんじゃないか、とか。 頭の何処かで、私はそんな都合の良いことを考えてしまっていた。 「近藤さん、しっかり!!」 「局長ォォ!!」 敷地内に配置されていたはずの隊士達が騒ぎを聞きつけて次々と集まってきて、叫ぶような声が脳に響き渡る。 どうしてそんな顔をしているの。そんな、苦しそうな顔。 『こ、近藤、さん…?』 目の前で起こったのは、近藤さんが撃たれたという事実。丁度話し掛けようと足を向けた瞬間だった。 たった数メートルの距離がどうしようもなく果てしないように感じられて仕方ない。 「フン。猿でも盾代わりにはなったようだな」 猿?盾代わり?このひとは何を言ってる? 目の前で近藤さんが倒れているのに、何故あなたは無事なのですか。 ガッ、と何かを止めるような音。そちらに目をやると刀を抜き掛けた沖田さんと、彼の腕を掴む土方さん。 「止めとけ。瞳孔開いてんぞ」 「…………」 『近藤さん…!!』 あぁそうだ。私が、ぼやぼやしているから。迷惑掛けて、挙げ句護ることさえも出来ないのだ。強くなりたい、そんなこと誰でも口に出来る。私は結局何一つ護れやしない。弱い。 私の中で、何かが弾けるような音が聞こえた。 『うぁぁぁああッ!!』 「優衣!?」 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |