「珍しいね、君がサボりなんて」 『……山崎さん』 「いいよ何も言わなくて。ちゃんと副長には黙っとくからさ」 『すいません、ありがとうございます』 局長たちから少し離れたところで腰を降ろして一人俯いていた。 縁側に座ったまま俺を見上げて力無く笑った後輩の顔色はあまり良いとは言えるものじゃない。こりゃ相当きてるかもな、と思った。 彼女はこんな真選組では貴重な常識人だし、周囲に愚痴を零すことなんてほとんどないのだ。だからこそ、時々こうして自責の念に押し潰れそうになる。 「話、聞くよ?俺で良かったら」 優衣ちゃんが以前、見回り中に攘夷浪士たちに襲われた際はもっと酷かった。もちろん自分自身も怪我を負っていたが、そのとき彼女が悔やんでいたのは仲間を傷付けられたことだ。 まるでこの世の終わりみたいな顔をして帰ってきたせいで、副長がとても焦っていたのを今でも覚えている。まあ、あのひとも過保護すぎるとは思うけど。 『でも、』 「じゃあこれは先輩命令。いいから話してみなって」 『……やっぱり山崎さんには敵いませんね』 「そりゃ光栄」 もう、と言いいながら彼女にやっといつもの笑みが戻ったのを見て自然と俺の口元も緩んだ。 君には笑顔が似合うよ、なんて言えば笑い飛ばされてしまうだろうから口には出さない。っていうか言えない。色んな意味で。 恥をかくのはまだしも(もちろんイヤなんだけど)、副長にバレたらボコされるだけじゃ済まないと思う。殺されかねないもん。俺だって自分の命は惜しい。 「溜め込むのは悪い癖だ」 『分かりましたよ』 観念したような顔で隣を指差した彼女は目線を合わせないまま話し出す。俺は少し迷ったあと、大人しくそこに腰を降ろした。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |