かしづき給ふ | ナノ

 
 
「えー、みんなもう知ってると思うが…先日、宇宙海賊"春雨"の一派と思われる船が沈没した」

『げほっごほっ…ちょ、何があったんですか皆さん』

「しかも聞いて驚けコノヤロー。なんと奴らを壊滅させたのはたった二人の侍らしい」

「「「え゙え゙え゙え゙え゙!!マジすか!?」」」


何やら割と重要な話があるとのことで緊急召集された私たち。しかも、珍しく隊長だけではなく全員だ。

ところがどうしたことか、土方さんに頼まれ少し席を外して帰ってきたら部屋に充満していた火薬の匂い。思わず噎せてしまった。挙げ句、隊士達の服も所々焦げている。私がお茶を淹れに行っている間に一体何があったのだろうか。


『春雨……』

「その様子だと、もう知っていたかな?」

『はい。口を挟むようで申し訳ありませんが…連中は大量の麻薬を江戸に持ち込み売りさばいている、と』

「残念ながら未だ現場は押さえられてませんが、"転生郷"と呼ばれており、比較的流行に敏感な若者達の間で出回っているそうで」


山崎さんが危険を犯してまで潜入捜査で得た情報を元に、監察方でも何度か取引場所へ足を運んだ。だが、どれもハズレ。

たまたま中止されたり指定場所の変更があったか、或いはこちらの行動に気付かれたか。恐らく後者。となると、こちらとしても随分厄介なのだが。


「山崎と優衣ちゃんの言う通り」

『ですが得られる快感も依存性の強さも他の比でないうえ、みな例外なく悲惨な末路を辿っているそうです』

「まあ、攘夷党じゃなくても連中を許せんのはわかる。だが問題はここからだ」


なんとなく続きを聞く気にはなれなかった。私たちも捜査をするうえで、薄々ではあるが勘付いてはいたのだ。

何時になく真剣な顔で切り出した彼を見た隊士達も、本能的に何かを感じたのだろう。息を呑んだのが分かった。
 
 



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