「爆弾処理の次は屋根の修理か?一体何がしてーんだてめェは」 「……お前、あん時の」 「やっと思い出したか」 一瞬ひらめいたような顔をするも、すぐにこの前と変わらぬ死んだ魚のような目に戻った男はゆっくりと腰を上げた。てっきり逃げるのかとも思ったが、それ以上の行動を起こす様子もない。 やっぱりつかみ所のないやつだとは思ったが、この前確かに俺の剣の軌道を読んだうえで避けていた。ある程度の経験はあるはずだ。目線は逸らせない。 「近藤さんを負かす奴がいるなんざ信じられなかったが、てめーならありえない話でもねェ」 「近藤さん?」 「女取り合った仲なんだろ。そんなにイイ女なのか」 「……あのゴリラの知り合いかよ」 総悟から借りてきた真剣を投げると、上手い具合に相手の手の中に収まる。それを手にしても尚、意味の分からないとでも言いたげな顔をする銀髪に自分がだんだんとイライラしてくるのが分かった。 今日は戦う気が無いのか、あるいは俺を油断させる為の罠か。どちらにせよ、その気がないならこちらから仕掛けるまでだ。 「にしても何の真似だこりゃ……だいたいアンタ、可愛いネーチャン連れてただろ」 「今あいつは関係ねェだろーが、よッ!!」 「ぬをっ!!」 爆発した感情は、そのまま自身の剣へと伝わる。もちろんそれは自分も例外ではないわけで。 もともと瓦の上で滑りやすい足元だというのもあっただろうが、俺が知ったことではない。ゴロゴロと転がってゆくのを見ながら、何故剣を抜かないのかと内心舌打ちした。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |