ある日の夕刻。町の外れにある神社の階段には、一人の少女が座り込んでいた。 その場に少女以外の人影はないようで、あたりも次第に暗くなってゆく。あとは太陽が隠れるのを待つばかりといった様子だ。 「なぁ、お嬢ちゃん。お一人かい?」 ふいに掛けられた声を聞き、顔を上げた少女が視線の先に捉えたのは、いかにもといった顔付きのゴロツキ共。彼女と男達の距離は数メートルほど。 だが少女はこれといって焦る仕草も見せず、憔悴しきった様子でぼんやりとその光景を目に映す。 『……だれですか』 「おじさんたちはね、君みたいに家のない子たちを引き取るボランティアをしてる良い人なんだよ」 じゃり、じゃり、と彼等が近付くた度、静寂に包まれた境内に響く音は少女の鼓膜を小さく揺らした。 『おじさんたち、いい人に見えません』 「こりゃあ参った。可愛い顔してなかなか手厳しいねぇ」 『これ以上、私にかまわないで下さい。さようなら』 「ガキがなま言うもんじゃねぇよ」 普通の子供なら、この時点で逃げ出すだろう。だが少女はそれをせず、ただただ沈みきった瞳で男達がせまってくるのを見ている。 彼女のそれは、まるで希望をなくしたような、光を失ったような目であった。 「殺さないだけ幸せだと思えってんだ」 そう言って細い手に手を掛ければ、我に返ったような表情で立ち上がる。それを見た彼等は満足そうに口元に下卑な笑みを浮かべた。 『だ、だれか…助け、』 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |