先日、ようやく発見した我らが局長は橋の下で白目を剥いてのびていた。近くにいた野次馬に聞いたところ、女を取り合った決闘だとか。 あの近藤さんが負けるなんて相手は一体どんな人かと思ったが、数メートルほど離れていたところに座り込んでいた銀髪の男性だそうだ。 当事者である彼も誰にやられたのかボロボロになっていたのも手伝って、色々と信じがたいものではあったのだが。 「副長オオオ!!」 「局長が女にフラれたうえ女を賭けた決闘で汚い手使われ負けたってホントかァァ!!」 『お茶どうぞ』 「あ、どうもすいません。ありがとうございます」 会議中にも関わらず、第一声は議案と全く関係のないものだった。その声を皮切りに「信じられない」「相手は何者だ」と次々に飛び出る言葉の数々。 もちろん隊士達が口にした非難の矛先は、微動だにせずタバコを吸い続ける副長である。 「会議中にやかましーんだよ」 一通りの文句が止んだところで土方さんは静かにそう言い放った。対する隊士達も少し冷静になったのか、次の言葉を待つようにして静まり返る。 「あの近藤さんが負けるわけねーだろが。誰だ、くだらねェ噂たれ流してんのは」 「沖田隊長がスピーカーでふれ回ってたぜ!!」 相変わらぬポーカーフェースで続けた彼に食ってかかったのは原田隊長と名前は分からないモ、 「モブって言うなァァア」 『すいません』 私がモブ隊士と言い切っていないうちに止めたということは、自分でも薄々気付いていたということなのだろうか。おっと話が逸れた。これは失礼。 原田さんと隊士Aに指を差された本人である沖田さんは、静かにお茶を啜るといつもの笑みを携えて爆弾を投下すべく口を開いた。 「俺は土方さんにききやした」 「……コイツにじゃべった俺がバカだった」 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |