かしづき給ふ | ナノ

 
 
そろそろ休憩の時間かと思い、ペンを置くと重い腰を上げ台所へ足を向ける。

今日は珍しく沖田さんが進んで見回りに言ったせいか、屯所の雰囲気はいくらか落ち着いていた。

とは言っても、恐らく途中で遊び呆けているに決まっている。また土方さんの仕事を増やしていないと良いのだけれど。


『あ、山崎さん』

「優衣ちゃん」


密偵用の黒い服に身を包んだ先輩は、相変わらず優しい笑みを浮かべて手を振ってくれた。


『先日はお疲れ様です。今日も任務で?』

「そんなに大きな仕事じゃなかったけどね。優衣ちゃんはお茶出しの時間かな?」

『はい。今日も書類に追われているみたいなので』

「あの人、放っておいたら一日中やってそうだもんなぁ」

『ほんとですよ。少しは自分の体調にも気を遣ってくれたら嬉しいくらいなんですけど』

「副長が倒れたんじゃ元も子もないからね。じゃ、よろしく」

『それでは』


山崎さんの言う通り、真選組の頭脳である彼が動けなくては話にならないというのに。昔から始末書なんかに取り組んでる際、周りが見えなくなる節があるのだ。

以前、朝から晩まで飲まず食わずで過ごしたことがあった。そのときには「マヨネーズゥゥゥ」とか何とか言いながら白目をむいていた覚えがある。

それ以来、時間を見計らってお茶を出すのが私の仕事に加わった。


『そういえば、近藤さん見てないな』


不意に思い出した上司は、朝から全く姿を見ていないことに気付く。

いたらいたで暑苦しいものの、流石に半日も不在となると変だ。特にこれといった連絡もなかったはず。

まあ、それについては土方さんに聞いてみるとしよう。
 
 



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