かしづき給ふ | ナノ

 
 
『すいません、ちょっと待ってて下さいね。すぐ取りますんで』


沖田さんが乱暴に切った縄を解いてやると、3人はそのまま地面にへたり込んだ。

ちなみにここまでした張本人である彼は既に興味が失せたのか、この場を私に任せて新しい飲み物を取りに行ってしまったらしい。相変わらず自由すぎて困ったものだ。


「あ〜…気持ち悪いヨ」

「ゔぇ〜」

『二人とも、大丈夫?』

「へーきアル」

「ぼ、僕もかろうじで…」


坂田さんはというと、ついさっき沖田さんによってかけられたジュースが未だ抜けないようで鼻を押さえたままピクリともしない。

流石に心配になり寄って大丈夫かと声をかければ、彼の視線が私を捕らえた。十秒ほど見つめ合っただろうか。

無言のままこちらへ手を伸ばしたので、試しにその手を取ってみる。すると「起き上がらせて」と小さく言った。その目は母に菓子をねだる子供のようだ。


「優衣ちゃんが助けてくれたら俺、大丈夫そう」

『全くもう…』


仕方ないなと言いながら彼の腕を引く。その手には思いのほか大きな力は籠もっておらず、ほぼ自力で立ち上がっていた。存外元気のようで私は胸を撫で下ろす。

それも束の間で。後ろから伸びてきた腕が私を引き寄せ、あっという間に坂田さんとの距離が開いた。見上げた先には随分と不機嫌そうな上司の顔。


「おい白髪。うちの隊士に汚ェで気安く触んな」

「ちっと近付いただけでこれかよ。おっかねーなオイ」

『ひ、土方さん…』

「あぁ、すまねェ優衣。気にしなくて良い」





(彼等はどうも似てるのに)
 
 



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