「そっ、そういえば!」 『はい?』 「優衣ちゃんって…その、好きな人とか…いねェの?」 突然の質問に不意打ちを食らった私は文字通り目を丸くした。きっと今、相当へんな顔をしているに違いない。 どう返して良いものかと、必死に思考回路の絡まった頭を奮わせるがダメ。やっぱり、この手の質問は苦手だ。 「あ、いや、嫌なら答えなくて良いんだけどよ」 『……すいません。私、そういうの本当に分からないんです』 「へ?」 『元々この環境に身を置いてますし、あのひと達とも小さい頃からずっと一緒に育ってきたんです』 「おう」 『だから、ふつうの女の子みたいなこと、分からないんです』 恥ずかしいですよね。自称気味にそう言うと坂田さんが顔を曇らせた。何故、彼がそんなに悲しそうな顔をするのだろうか。 ふいに伸びてきた手は私の頭上で止まり、坂田さんがにっこりと笑う。下りてきた優しげな拳は、土方さんがよくするそれに酷く似ていた。 「今度、二人っきりで遊ぼーぜ。んで、いっぱい話そう。俺が楽しませてやっから。な?」 『……考えて、おきます』 「ん。期待してる」 (不器用で、温かくて、) (貴方は彼によく似ている) [*←] [→#] [戻る] [TOP] |