電源ボタンを押せばパチリと小さな音を立てるテレビ。少し古いブラウン管のそれは、私の我が儘を聞いてくれた土方さんが中古で買ったものだ。 そろそろ屯所も地デジ対応にしないとそのうち映らなくなってしまうんだろうな。そんなことをぼんやり考えていた私は、画面に映った人物を見て思わずテレビの前で固まった。 『山崎さん、山崎さん』 「何?どうしたの急に」 『これ、あの、坂田さん…』 「……ほんとだ」 丁度ついたばかりのチャンネルに映っていたのは、なんとこの前お花見で顔見知りになった万事屋一行だった。 しかも何やらこれから始まるのはペット同士のレースらしい。どんなタイミングだと内心突っ込みたくなった。 「……なんかさ、2匹とも異様にデカイよね」 『ですよね』 っていうかあの大きさの定春くんの隣で平然と並んでるのは何だろう。ペンギン?いや、ペンギンが全身白いわけない。 あれ。定春くん坂田さんに襲い掛かってるけど大丈夫なのかな。仲が良いやら悪いやら。 ……あれ?ペンギン?の足元、オッサンの脚みたいな何かが見えた気がするんだけど。気のせい?気のせいなの? 『さっ、』 「さ?」 『定春くんかわいいいいい』 「そ、そっかぁ…」 『山崎さん!私、定春くんなら噛まれても良いんじゃないかって思うんです!』 「待ってそれはマズい!君がしっかりしてくれないと真選組は崩壊する!!……って何だよアレ!?」 私が定春くんに釘付けになっている間に競技が変わってしまったのだろうか。 目的の骨を目前に坂田さんに押さえられるペンギンみたいな何か、その彼を押さえる自称宇宙キャプテン、更にその上から噛み付く定春くん。 『……今の聞きました?あのペンギン喋りましたよ!』 「いや、それよりよく見て!口の中から何か出てくる!?」 『え、ちょっ、人の手!?』 「うそだろオイ!」 あっ、と思ったときには急に暗くなってしまった画面。次に出てきたのは“しばらくお待ち下さい”の文字だった。 『今日のことは忘れた方が良いんですかね』 「ですね」 (世の中、知らぬが仏) [*←] [→#] [戻る] [TOP] |