「うぐ、」 少女から一番離れたところで立っていた男が何の前触れも無しに倒れる。仲間の呻き声を聞いた男達が後ろを振り向くと、そこには木刀を握る2人の青年が立っていた。 「なんだお前達!」 「いやぁ、最近ここらで子供を攫う悪党がいるって聞いてね」 「テメェ等のことか」 突如現れた敵に混乱を見せるも、その姿を見た途端、年下にやられたのでは面子が立たないと言わんばかりの様子で怒りを露わにする男達。 「やっちまえ!!」 「フン。そっちがその気なら仕方あるめぇ」 「やるぞ、トシ」 ゴロツキ共が一人、また一人と倒れていく。まだいくらか小さな少女は、それを呆然と眺めていることしか出来なかった。 素人でも分かる圧倒的な力、芯の強さ。それを幼くして目の当たりにした彼女は、自身の記憶にしっかりと刻み付けていく。 「調子に乗るなァ!あがッ…!」 最後の一人に渾身の一撃を叩き込んだところで、物陰から出てきた少年がつまんなそうに口を尖らせながら呟いた。 「なんだよ、大したことねェじゃん」 「いや、総悟は何もしてないでしょ」 「ここを教えたのは僕でさァ。それに2人を応援してやした。心の奥底で、たぶん」 「たぶんかよ!」 彼女が視界の隅で捉えたのは3人の中で恐らく一番年長であろう男と、自分と同い年くらいの男の子。 「大丈夫か」 『あ、ありがとう…ございま、す』 そして、後ろで束ねた髪を風になびかせた青年が、無愛想ながら少女に手を差し伸べた。 「っおい!?」 差し出した手はその小さな拳を握ることなく終わるも、しっかりと倒れ込んだ少女を受け止める。 ――これが後に真選組の幹部となる3人と、真田優衣の出逢いであった。 (自分らしくないと思った) (それでも俺は、この命をただ護りたいと感じたんだ) [*←] [→#] [戻る] [TOP] |