「それはそうと、まさかアンタが暴れ出すとは思ってもみなかったねィ」 『……正直なところ、私自身も分からないんです』 「ふーん」 『情けないですよね。笑ってくれて構いませんよ』 薪を足しながらしゃがむ沖田さんの隣に、暖をとるようにして座り込む。横から伸びてきた手が急に頭を撫でるものだから思わず身体が強張った。 彼なりに気を遣ってくれているのだろうか。そう思うと少し申し訳ない反面、嬉しくもあって複雑だった。少なくとも、嫌ではない。 「ちょっ、何してんのォォォォォ!!お前ら!?」 『あ、土方さん』 「何でィ土方さん。男の嫉妬ほど醜いもんはありやせんぜ」 「そっちじゃなくてェ!いやそっちも…って違うわァァア!!」 立ち上がった沖田さんは至極楽しそうに笑いながら、ゼェゼェと肩で息をする土方さんに向き直った。 そして言う。死んでないから大丈夫だ、と。いや、そういう問題じゃない気がするけれども。 「要は護ればいいんでしょ?攻めの護りでさァ」 「貴様ァ!こんなことしてタダですむと、モペ!!」 『すいません。ちょっと黙ってていただけると嬉しいです、高官さん』 「俺もアンタと同じでさァ。早い話、真選組にいるのは近藤さんが好きだからでしてねぇ。でも何分、あの人ァ人が良すぎらァ」 『他人の良いところを見つけるのは得意なのに、悪いところを見ようとしませんからね』 「あァ。だから俺や土方さんみてーな性悪がいてそれで丁度いいんですよ」 「……フン」 微笑みながら目を伏せた沖田さんにふざけた雰囲気は無く、突然の変わり様に少しだけ毒気を抜かれたような気がした。 きっと近藤さんを想っているんだろう。いつもの彼からは想像出来ない程に貴重な、とても優しい表情だ。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |