かしづき給ふ | ナノ

 
 
『……私、また近藤さんに迷惑かけてしまいました。頑張ろうとすればするほど空回りして、自分も嫌になっちゃって』

「そんなことないよ。優衣ちゃんは充分頑張ってる」

『いえ、買いかぶりすぎです。それに山崎さんの方が私なんかより頼りにされてるじゃないですか』

「ないない。それこそないって。俺なんかより頭の回転も速いし、気も使えるんだから」


自分より少しばかり低い位置にある頭に自身の手を置く。特に抵抗する様子もなかったのでそのままそっと撫でてやると、それに合わせて彼女の頭が揺れた。

普段よりも少し低い、弱々しい声。心なしか震えているようにも思える。なんだかやりづらさを感じながらも、いつも以上に集中してそれに耳を傾けた。


『私が頼りないから、土方さんはいつまでたっても潜入捜査をやらせてくれないんです』

「そっか、……ってちょっと間って!なんか勘違いしてるこの子!」

『勘違いなんかじゃありません!……自分でもそのくらい分かるんです。だから、早く強くなりたい。誰かを護れるくらいに』

「それは違うよ!だから、その…そうじゃなくて副長が、」

『何ですか』

「あ、いや、何でもない」


自分で言って項垂れる優衣ちゃんに流石の俺もどうして良いか分からなくなった。なんでこう俺の周りって、不器用というか鈍感なひとが多いんだろうか。

そのとき彼女が急に立ち上がったことで俺の手が宙を彷徨った。


『私、もっと強くなりたいです』

「うん、頑張って」

『やっぱり仕事頑張ります』

「それが良いと思う」

『よし、行ってきます』

「いってらっしゃい」


頑張らなきゃ。俺に向けられた少し小さな背を見てそう思い、元の場所に戻った。ラケットを持つ手に力を込めて一心に振り下ろす。矢先、副長に殴られた。痛い。


「ちょ、やめ、すいませんっしたァァア」

「謝る元気があるなら腹切れやゴルァ」

「いやぁ、それはちょっと…、あがッ!!」

「口答えしてんじゃね、」


副長が言いかけて新たな拳を振りかぶったところで耳に響いた銃声。振り返った先には、依頼人であるカエルを庇うような形で倒れ込んだ局長がいた。


「山崎!!」

「っ、はい…!」


打たれた方角からいち早く犯人の居場所を特定した副長の指示で走り出す。ラケットはその辺に投げ出した。そんなことよりも頭の中を占めるのは、さっきまで一緒にいた自分の後輩だ。





(……優衣ちゃん)

(頼むから、)
(どうか自分を責めないで)

 
 



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