「何しやがんだてめェ」 「ゴリラだろーがなァ、俺たちにとっちゃ大事な大将なんだよ」 クソがつくほどガキで、生意気で、学なんてものも無い。あの頃、ただのゴロツキだった俺たちがそこにいた。時には殴り合いもしたし、仲間割れをしたことだってあった。 それでも確かなもので俺たちはつなぎ止められていて。今思えば、絆なんてそんな生易しいもので表しきれるものではないのかもしれない。 「剣一本で一緒に真選組つくりあげてきた俺の戦友なんだよ」 お人好しなうえ人の悪いところを見ようともしない。後先考えない行動で何度危険を冒したかなんて分からない。けれども、そんなあの人だったから。近藤さんだったから、今の俺たちがある。 「誰にも俺たちの真選組は汚させねェ」 だから、今あるものを護るのは俺たちの役目。そして、近藤さんや真選組を護るのが俺の役目だ。 「その道を遮るものがあるならばコイツで……叩き斬るのみよォォ!!」 渾身の一撃はかわされ、不意打ちの蹴りが飛んでくる。転がった反動を利用して体を捩りながら思い切り振りかざすと、奴の左肩辺りからは血が飛び散った。 お互い体勢が整ったところでやっと鞘から抜き取ったのを確認し、斬りかかった俺の剣が掠めたのは手ぬぐい。二度もかわされた。確かに斬ったと思ったのに。 やられる。そのとき俺は、ただ純粋にそう思った。 「はぁい、終了ォ」 カラン、と虚しい音を立てて落ちた刀身。もちろん、さっきまで俺が奴に向けていたものに変わりない。それを見た俺は唖然とするばかりだった。 「おいハゲェェ!!俺ちょっと病院行ってくるわ!!」 「待てェ!!……てめェ情けでもかけたつもりか」 「情けだァ?そんなもんお前にかける位ならご飯にかけるわ」 丁度自分に背を向けた形になっていて顔は見えない。その代わりに、太陽の光を受けた銀髪が風になびくだけだった。 はっきりと力の差は感じたはずが、不思議と敗北感は感じない。むしろ何かが吹っ切れたような気さえするのは何故だろうか。 「喧嘩ってのはよォ、何かを護るためにやるもんだろが。お前が真選組を護ろうとしたようによ」 「……護るって、お前は何護ったってんだ?」 「俺の武士道だ。じゃーな」 「なっ、」 「あぁ、それと一緒にいたあの子、君の彼女じゃないの?」 「……あいつは、俺たちの妹みてェなもんだ」 「ふぅん」 (気に食わないやつ) [*←] [→#] [戻る] [TOP] |