「ぬわァァァァァ!!」 『……え、』 一瞬のうちに何かが目の前を通り過ぎ、次の瞬間にはガラスの割れる音と上の方から響き渡る爆発音。 間抜けな声を出した私は驚きのあまり冷たい床に座り込んだ。 「優衣ッ…!」 『ひ、土方さん』 「怪我はねェか」 『怪我はないんですけど、その、腰が抜けちゃって』 そう言うと深く溜息を付いて手を差し出してくれる。やっとの思いで立つと、申し訳ないのと同時に自分が情けないと思った。 『すいません』 無意識のうちに、だんだんと下がっていく私の視線。 ふいに握ったままだった手がするりと抜けたことに少し不満を覚え、上を見上げる。そると、それはそのまま頭へ乗せられた。 大きくて、温かい手。私はこの手が好きだ。触れているだけでとても安心するから。 『……あと、ありがとうございます』 「んな顔すんなって」 『でも、』 「まあ、お前が無事で何よりだ」 そのままスルリと髪を滑る手を素直に受け入れれば、それを見た土方さんも僅かに目を細めた。 「土方さん。いつまで真田に触ってるつもりでィ」 「べ、別に」 「おーいみんなァ。土方の野郎がセクハラしてまさァ」 「総悟てめっ!違うっつってんだろォォオ」 いつのまにか離れた後に残る微かな温もりに、なんとも言えない想いになる。もう少し撫でていてもらいたかったのに、なんて。 (いつか貴方のように) (誰かを、何かを、護れるひとになりたいんです) [*←] [→#] [戻る] [TOP] |