現場に到着すると既に数人の浪士達を逮捕した仲間の姿があり、ひとまず胸を撫で下ろす。近くにいた隊士の方に声を掛け、副長と一番隊のみんなのいる階を教えてもらった。 非常階段まで回るには時間が掛かりそうだったのでエレベーターを使って上を目指すが、ホテルの中は少しばかり静かすぎる気がする。 沖田さんがいるから、もっと派手な音が聞こえても可笑しくないはずなのだけれど。 「もう桂は捕まったかなぁ」 『どうでしょう。土方さんと沖田さんが向かったとは言え、相手はかつて狂乱の貴公子と恐れられていた桂ですし』 「それもそうだ」 それっきり会話は無かったが山崎さんが優しい笑みを浮かべながら大丈夫だよ、と声を掛けてくれた。その気遣いだけでもとても嬉しい。 このような大きな仕事は久しぶりで、元々実戦に不慣れな私には向いていないと自分でも分かっていた。 ゆっくりと開くドア。一応警戒しながらも外を覗くが廊下には誰もいない。 「あっちみたいだね」 声のする方に向かって走れば、次第に聞こえてくる、いくつもの物音。 それでも、自分だけ屯所で待機なんてしていられるはずがないのだ。もう昔のように護ってもらうばかりでなく、自分も誰かを守れるようになりたい。 ここを曲がったところにみんながいるはず。そう思って踏み込んだ時だった。 [*←] [→#] [戻る] [TOP] |