昨日は散々だったけど、平和島くんは意外といい人だと思った。短気なだけで本当は優しいのかもしれない。 「悠木」 普段は折原くんと殺し合いと言う名の喧嘩、むしろ喧嘩という名の殺し合いをしてる姿しかまともに見たことないけど。 まあ人は見た目によらないとも言うし、それだけで恐い人だと決めつけるのはよくないよね。 「悠木!!」 『は、はいっ!?』 「5ページの問題を解いてみなさい」 『あー…えっと、その…わ、分かりません』 「ちゃんと話を聞いてないからだぞ」 『……すいません』 今日から授業が始まったばかりだというのに、授業開始早々に上の空とは何事だ。 だが残念なことに、私は昨日の今日で気持ちの切り替えが利くほど要領の良い頭など持ち合わせていない。 「この問題を誰か、」 ガラガラ、教室のドアが開く音がしてそちらに視線をやると、何でもない顔で平然と足を進める平和島くん。 堂々と遅刻をして登校してきた彼に対して、先生は特に突っ込むこともしない。きっと聞くだけ無駄だと分かっているのだろう。 「ん…悠木?」 まさかこのタイミングで名前を呼ばれるとは思っておらず、突然のことにドクドクと心臓がうるさく反応する。 『あ、えっと…うん』 「俺の前だったのか」 『そ、そうだよ』 やっとの思いで絞り出した声が微かに震えていたが、特に触れてこなかったということは気付かなかったのか。そうであってほしい。 返答がないことを疑問に思い、そっと後ろを振り返ってみると彼はスヤスヤと寝息をたてていた。 風にそよぐ金髪 (思わず触れたくなった) 彼は絶対に窓際だと思う。名前の順とか関係ないよ、きっと(書き終わってから気付いた) |