『まっ、待ってってばー!』 「んなこと言って俺が止まった隙に逃げるつもりだろ!」 『折原くんじゃないんだからそんなこと、うぶっ』 相変わらず逃げ回っていた目の前の女は転んだ。それも随分と派手に。しかも、何もないところで。 『あいたた』 「……………」 『あ、えっと…止まってくれたのは嬉しいけど。そんな目で見ないで下さい……』 本人も本当に恥ずかしかったらしく、耳まで真っ赤になって今にも湯気が出そうだった。 「……ぷっ」 『なっ!笑わないでよ余計に恥ずかしくなるから!!』 「だ、だって……ククッ」 『わー!やーめーてー!』 追いかけ回しているときは頭に血が上っていて気付かなかったが、こいつがノートの落書きをしたような奴に見えないじゃないか。 それにしても逃げている最中の脚力やすばしっこさから今の姿は想像出来ない。……なんつーか、その、少し鈍くさい気がする。 『へ、平和島くん!』 「あ?」 『その、ノートの落書き…』 「あぁ…悪かったな。お前じゃないんだろ?」 『へ?何で分かって、』 「お前、そんなことするような奴には見えねぇからよ」 『あ、ありがとう!』 「……おう」 てっきり怒鳴られでもするかと思っていたのに。返ってきたのは花が咲くような眩しいほどの笑顔だった。 「お前、名前は?」 『悠木小春です』 「知ってるだろうけど俺は平和島静雄。……その、よろしくな」 『あ、はい』 仲直りしよう (妹みてぇ) (……可愛い、かも) |