歪曲アーク | ナノ

 
 
『え、ちょっ、ねえ!……岸谷くん!?』

「臨也たちに見つかると面倒だから急いでもらえる?」

『面倒って…、』

「いやほら、静雄はともかく臨也のやつにバレたら刺されそうだし」

『なんで!?』


先刻電話で呼び出された私は、全く状況の把握が出来ないまま。ずんずん進む岸谷くんの後を付いて行くしかないらしい。

掴まれた腕が少し痛い。っていうか、それよりも何処へ向かっているのかだけでも教えていただきたい。何これ誘拐?


「変な言い掛かりはよしてくれよ。僕には同級生の女の子を誘拐するような趣味はないから」

『……さりげなく人の心読まないで下さい』

「ごめんごめん」


相変わらず前を向いたままの彼の表情は見えないが、恐らくいつも通り楽しそうに微笑んでいるに違いない。それが岸谷くんである。

この状況だとそれが逆に怖い気もしたが、恐ろしい考えはよそうと思って頭の隅に追いやった。


「この辺に見覚えない?」

『……あ、この前来た』

「当たり。今向かってるのは僕の家だよ」

『最初から言ってくれれば良いのに』

「いやぁ。断られる可能性もあったから、万一と思ってね」


ようやく振り返った彼は少しだけ眉を寄せながら、困ったように笑っていた。

折原くんじゃあるまいし頑なに断ったりしないのに。そんなことを考えながらたぶん大丈夫だと思うけど、と笑顔で返しておいた。


「あぁそうだ。たぶん最初はびっくりすると思うけど、大声出したりしないでね」

『へ?』

「セルティは本当に美人だし優しいし可愛いし、……まあ、言い出したらキリがないからこの辺で止めとくけど」

『もしかして前に言ってた同棲してる彼女さん?』

「うん。君ならセルティにとって良い友達になると思うんだ!ってことでよろしく」

『は、はぁ…』


ごめん岸谷くん。やっぱり絡みづらいと思ってたのは気のせいじゃなかった。








まだ見ぬ彼女は

(っていうか大丈夫かな)
(英語苦手なんだけど…)







小春ちゃん、いよいよセルティと対面…!

それにしても新羅が必死すぎて笑える。
 
 






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